次期社長と訳あり偽装恋愛
「結局、話し合いは平行線だった。それなのに、さっき親父があんなにあっさり引き下がるから驚いたよ」
「それはしげさんが口添えをしてくれたから」
「しげさん……」
「あ、ごめんなさい。会長ですよね」
立花さんが不満気につぶやくので慌てて訂正した。
「いや、別にしげさんでもいいけど……」
何かを含んだような言い方をする。
一体、何が引っかかるんだろう?
「あの、何かダメでしたか?」
「ダメっていうか、じいちゃんのことを名前で呼んで俺のことはいまだに立花さんだから」
そこかー!
まさかの名前でふて腐れたような表情をするなんて思わなかった。
「ここは会社だし、あの……」
「いいよ。そのうちたっぷり名前で呼んでもらうから。それで話を戻すけど、じいちゃんは親父にどんなことを言ったの?」
「えっと、社長に息子の幸せは考えてやらないのかと言ってました。それと、プロジェクトの件で、縁談がなくてもそれを成功させる力を持っている優秀な社員がたくさんいるだろうと。しげさんは終始、立花さんのことをすごく気にかけていました」
あの時は軽くパニックになっていて、全部の内容を覚えているわけではなかったので、かいつまんで説明した。
「そう……。やっぱり、じいちゃんは周りをよく見ているんだな。親父も根は悪い人じゃないんだけどね」
立花さんは苦笑いする。