次期社長と訳あり偽装恋愛
「本気じゃないとプロポーズなんて出来ないよ。別に今すぐにという訳じゃない。お互いにいいタイミングがきたら結婚したいと思っている。だから、今は予約させて」
思いがけない申し出に胸がいっぱいになり、涙が出る。
そこまで真剣に考えてくれていたことに嬉しさがこみ上げる。
「私なんかでいいんですか?」
「“私なんか”なんて言うもんじゃないよ。俺は梨音ちゃんがいいんだ。梨音ちゃんしかいない」
真っ直ぐに私を見つめ、頬に流れる涙を拭ってくれる。
「嬉しいです」
はにかみながら言うと、立花さんは俯きながら頭を抱えた。
どうしたんだろう。
私、何かおかしいことを言ったのかな。
不安な気持ちになっていると、立花さんは真っ赤に染まった顔を上げた。
「可愛い顔してそんなこと言わないで。ここで押し倒しそうになるから」
そう言って「行こう」と腕を掴まれ、私は立ち上がる。
「あと、プロポーズも仕切り直しさせて。勢いでこんな場所で言ったけど、次はちゃんとした場所でやるから」
こんな場所……?
そうだ、私は社長室に来ていたんだ。
社長室を出ると、ドア付近にしげさんたちが立っていた。
何かニヤニヤしているように見えるんだけど、気のせいかな。