次期社長と訳あり偽装恋愛
「翔真、話はできたのか?」
「お陰様で。ところでじいちゃんたち、そんなところで集まって何か面白いことでもあった?」
立花さんはそう言って目を細める。
社長室を出ると、そこは秘書の人達の席がある執務室。
亀井さんは席に座り、こちらを気にかけながらも仕事をしている。
私たちが社長室を使っていたから社長たちの居場所がなかったのかな。
でも、会長室は別にあった気がするけど。
「いや、特に。さて、梨音ちゃんの件は無事に解決したし、わしは着替えて作業でもするかな」
しげさんはスーツの上着に手をかけた。
「お父さん、作業服を着てウロウロするのは止めてもらえませんか?社内で会長に会っても挨拶もせず素通りしろなんて仰るから幹部社員たちが困惑しているんです」
「それは無理な相談だ。わしはこの格好が気に入っているからな」
「会長!」
社長の呼ぶ声にしげさんは素知らぬ顔をして会長室へと入って行った。
「全く、あの二人も相変わらずだな。梨音ちゃん、行こう」
立花さんはため息をつき、私の手を引く。
「失礼しました」
私は頭を下げて執務室を出た。
エレベーターホールにつき、ボタンを押そうとして立花さんに止められた。