次期社長と訳あり偽装恋愛
「今晩、梨音ちゃんの手料理が久々に食べたいんだけどいい?」
「はい、もちろんです」
不安げに聞いてくるので笑顔で即答した。
私の手料理を食べたいだなんて嬉しい限りだ。
「よかった。高柳から社食で手作り弁当を食べていないだけで、彼女と別れただの喧嘩しているだの言われてたんだよ」
立花さんは不服そうな表情を浮かべ、ため息をついた。
「あ、そうだったんですね……」
先週、偶然聞こえてきた会話の内容だ。
きっと私が聞いていたなんて立花さんは思っていないんだろう。
「最近はずっとコンビニ弁当や外食ばかりだったんだ。梨音ちゃんと付き合う前まではそれが当たり前だったんだけどね。だから、梨音ちゃんの手料理が食べれることがどれだけありがたかったのか身に染みたよ」
「それは大げさです」
「大げさじゃないよ。俺にとって梨音ちゃんと過ごした日々が何よりも大切なものになっていたんだから」
真摯な瞳を向けられ、胸がギュッと締め付けられた。
それより、立花さんも同じ気持ちだったことに驚きを隠せない。
「私もです。別れを切り出したあと、私にとって立花さんと一緒に過ごした時間がどれだけ大切でかけがえのないものだったのか気づきました。私から言い出したくせに……」
そう言って唇を噛む。