次期社長と訳あり偽装恋愛
立花さんと別れてからは何もやる気が起きなくて、全てが色褪せていた日々を思い出す。
「それは親父のせいだから、梨音ちゃんが気に病むことはない。それより、俺たちは同じ気持ちだったんだな」
立花さんは嬉しそうに満面の笑みを浮かべると「ちょっと充電させて」と言って私の腕を引き寄せ、抱きしめてきた。
久々に感じる立花さんの体温に愛しさがこみ上げ、広い背中に腕を回した。
そして、甘えるように逞しい胸に頬を擦り寄せた。
「だから、あまり可愛いことしないでよ」
その声に顔を上げると、困ったように笑う立花さんと目が合う。
「ホント、ここが会社じゃなかったらよかったのに」
そう言って私の額にキスを落とす。
立花さんの言葉に、ここが会社のエレベーターホールだったことを思い出し、慌てて距離をとる。
「今日の夜は覚悟しといてね」
ゾクリとするほど艶のある声で言われ、私の唇を親指でなぞる。
今日の夜って……!
立花さんの言わんとすることを理解し、顔が羞恥に染まった。
「さて、定時まであと少し頑張ろうか」
さっきまでの色気はどこへやら、気持ちを切り替えたように爽やかな笑顔でエレベーターのボタンを押す。
私はまだドキドキしてるのに!
立花さんに翻弄されっぱなしだ。
ポーンと音が鳴りエレベーターが着き、二人で乗り込む。