御曹司様の求愛から逃れられません!
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何度も飽きるほど重なり合って、目が覚めた。窓の景色はまだ真っ暗なままだ。起き上って隣を見たが、絢人さんの姿はなくなっている。
……私、何も着てない。

「目、覚めた?」

狭いキッチンからお水を入れたコップ持って、絢人さんが姿を見せた。彼はスリーピースのスーツ姿に戻っている。

「……はい」

「飲んで」

渡されたうちのコップを受けとると、乾いていた喉を一気に潤した。それをベッド脇のチェストに置くと、私は思い付いたように掛け布団を引き上げて胸を隠した。

「……見ないでください」

「はは、今さら。……もう一回したくなるから、そうやって煽るな」

頬を撫でて、チュッと軽いキスをされる。

絢人さん、いつもの笑顔だ。……望みどおりのものを手に入れたから、機嫌が戻ったのかな。
私ももう怒る気力はない。ここまで許して、怒る資格もないと思う。
吹っ切れると気持ちも少し軽くなり、彼と同じ笑顔を見せた。

「……真夏」

突然、ベッドに腰掛けていた彼は私を抱き寄せ、頭をグッと胸の中に押し付けてくる。
私が大人しくしていると、柔らかく髪を撫でてくれた。

「真夏……教えて。大嫌いって言ったの、なんで?……俺何かした?」

よく“何かした?”なんて聞けるなぁ、と可笑しくて笑った。ここまですべて、彼が強引にことを進めてきたというのに。
原因の婚約者のことは、もういい。彼が割りきっているのなら、私もそれに合わせる。

「嘘ですよ。何でもないですから」

「……何でもないのに、大嫌いなんて言うのか?」

「もう良くなったんです。どうでも」
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