御曹司様の求愛から逃れられません!
「あ、そうなんですね、早織さんの……」

私がそわそわと手持ち無沙汰にして立っていることにも気付かず、絢人さんは舌打ちをしながらパソコンのエンターキーを押す。

「俺は来週から結婚式の前までオーストラリア社に行かなきゃならなくなった。現地の取引先とトラブったみたいで、向こうが俺とじゃなきゃ話さないって言い出したからな。……亮太のやつ、今週うちに来て徹夜で編集するって言ってたのに、ドタキャンしやがったし」

「あ……亮太さん……」

「そう!アイツ!彼女の誕生日だったの忘れてたんだと。信じられるか?」

パソコンからこちらへ視線を向けてきた。
ひとりで悶々と抱えていたストレスを私にぶつけている感じだ。
絢人さんはこういう姿は昔から私にしか見せない。だから編集作業も含めて、私にしか頼れないということなのだろう。

それで、早織さんの結婚式のムービー?そんなのお安いご用だ。
むしろ、どうして今まで私を頼ってくれなかったのか、不満なくらい。曖昧な関係とか膠着状態とか、全然関係ない。困ったときは頼ってくれていいのに。

私は腕まくりをし、迷わず絢人さんの隣に座り、画面を覗いた。

「進捗はどんな感じですか?」

「まだ動画とか写真を取り込んで切ってるだけ。音とかエフェクトとかはこれから」

「了解です。パソコンもう一台あります?」

「ある。デスクの引き出しの中」

「借ります」

指をさされた場所からパソコンを取り出し、あちこち散乱しているコードから必要なものを選んでから、テーブルに持ってきた。

「構成のデータ下さい。使えそうなフリー素材ダウンロードして加工します」

「ああ」

「それと、切り貼り終わるまでオープニングとエンディングで流れる文字を作っておきますね」

「あ、それ助かるな。頼んだ」
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