優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「うちの優大にも困りました。全く話になりません」
私の横を通り過ぎる声。
その声と、織田先生の苦笑した声が聞こえてきた。
「本当にご苦労様です。こんな紙切れを破ったところで今更どうにもなりませんのにな」
「はあ。男手一つだと苦労します」
「引っ越しは何日なんですか?」
「夏休み入ってすぐです。出勤は八月からなんで10日ほど有休を使って、向こうの家の片づけをして」
……夏休み入ってすぐ。
振り返って、職員室へ向かう二つの影を追う。
優大くんのお父さんと織田先生が肩を並べて談笑している。
外では優大くんが運動会の準備をしているのに。
「あの、待って、まってください」
声をあげたのに、足が動かなくてその場で固まった。
喉が、からからに乾いて、声が震えてしまう。
怖い。
怖い。
振り返った織田先生と優大くんのお父さんが私を見降ろしている。
怖いけど、足が震えるけど、一歩踏み出した。