優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
だって運動場では、優大くんはあきらめず頑張っている。
「チャンスを、ください。優大くん、頑張ってるんです、チャンスをください」
「津田……? どうした、何を言ってるんだ?」
先生が不思議そうに私の方へ一歩。優大くんのお父さんは無表情で私を見ていた。
「優大くん、勉強頑張ってるんです。もし期末で、成績が良かったら彼の気持ちを認めてほしいです。本気です。本当に転校したくないんですっ」
怖い。織田先生に自分の意見を言うなんて、成績に響くかもしれない。これから目を付けられるかもしれない。服装検査の時に、紗矢みたいに目の敵にされて粗を探されて、いっつも監視される。
同じ野菜の形で出荷したい先生たちに、私は何を言ってるのか、自分で自分が怖かった。
「あのなあ、津田。こんな時期に転校したくないって我儘をなぜ認めないといけないんだ」
ははっと笑われて、怖くて悲しくて心臓が痛くて、涙がじわりと込み上げてきた。
「笑わないで。優大くんが、今、一番つらいのに笑わないで」
「津田、お前何を」
笑っていた先生の顔が引きつる。それでも私の目から、一粒涙がこぼれた。
「私たちの世界は狭いんです。学校と家と友達が世界の中心です。転校は、それを全部、無理やり剥がさるから、優大くんもこわいんです」
「あいつが怖いってたまか? それにあいつならすぐに友達もできるし、大丈夫だろ」
「優大くんは私と同じ、15歳ですっ」
つい大声を張り上げてしまった。