優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「先生はもういいです。私は、優大くんのお父さんに言いたいんです」
先生は驚いていたけど、優大くんのお父さんを見た。
工場で働いているからか、少しだけ油が混じった匂いがする。
表情は冷たいけど、何十年後かの優大くんを彷彿させるような、目とか鼻とか輪郭が似ている気がした。
「優大くんは、転校したくないって勉強頑張ってます。結果次第で考えなおしてほしいです」
「君は――……」
「親父」
優大くんのお父さんが何か言いかけた直後、現れたのはタンクトップ姿になって胸元を摘まんでぱたぱた仰いでいた優大くんだった。
優大くんは、私の顔とおじさん、先生の顔を見て、すっと冷たい表情になった。
その顔は紛れもなくおじさんにそっくりだった。
「蕾に何言ったんだよ」
「ちが、何もないよ。い、行こう」
急いで優大くんの元へ駆けつけて、腕を引っ張ったけどびくともしなかった。
「蕾、泣かせてんじゃねえぞ」
あああ。違うのに。
でも余計なことを言ってしまったのは私だ。先生もおじさんも関係ない。
誤解を解かないと。
「泣かせてるのはお前だ、優大」