優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
おじさんの声が冷たく響く。
「転校したくない、じゃない。転校は決定事項だ。逃げるな」
「ふざけるな。お前が勝手にきめただけだろ。俺から全部、奪うなよ」
「ガキがいい加減にしろ。今更、やめるわけないだろ」
「じゃあ、オヤジ一人で行けよ。俺は行かねえよ」
「いい加減にしないか!」
私が腕を引っ張ってるのに、今にもとびかかりそうな気迫の優大くんが怖い。
おじさんも、拳を握りしめていた。
「……優大、そして優大のお父さん」
口を開いたのは、織田先生だ。
「そして、津田も。少し時間をもらうぞ」
先生は大きなため息をこぼし、二階の進路指導室へ誘導してきた。
渡り廊下には、優大くんの声に人が集まってきていたので、そうするしかなかった。
進路指導室には、織田先生と担任と副担任の先生まで緊張した面持ちでテーブルの向こうに座っていた。
埃臭いテーブルの向こう。
ラインがある。大人と私たちの境界線だ。
でも織田先生と優大君のお父さんは、優大くんを挟む形で座る。
境界線を越えず隣に座った。私は窓辺のソファに座るよう促され、大人たちの言動を見守るしかできない。
「優大、お前は少し黙って聞いていろ。いいな」