優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
織田先生の声に、不服そうに舌打ちしておじさんの拳骨が頭に飛んで、渋々頷く。
織田先生は、窓の外を見て小さく零した。
「あの工場は、この町のシンボルだったな。どの家からもきっと見える。どの学校からも見える」
町の日常をテーマにしたコンクールでも、商店街を描いていた子、学校を描いていた子、公園、通学路、どの絵にも必ずと言っていいほど工場の煙突は出ていた。
「頑張ってくれていたが、あの工場は三年後に休止することになっている。それで、隣の市の工場に、あの工場の技術を伝える仕事はまだ残ってるんだ」
「だから、なんだよ。知るかよ」
「お前の三年間の成績表、よおく見てみろ」
私からは見えなかったけど、優大くんのおじさんが頭を抱えているのが分かった。
「お前の成績では、市外からの受験は難しいんだ。お前の親父さんはせめて成人するまではここにお前を残したいと頑張っていたが、三年後に休止することになってお前の将来を優先したんだ。お前が今、我儘で親父さんを殴っているのだと自覚しなさい」
優大くんは何も言い返さなかった。ただ唇を白くなるまでぎゅっと噛んで耐えていた。
「お前だけが辛くて苦しいわけではない。お前を残しておけない親父さんも、離れたくなくて勇気を出してくれた津田も、何を言われても聞いてくれないと俺に泣きつく担任も、お前のことを思っている」
おじさんは黙って目を閉じて、足の上に置いていた手の拳をさらに強く握りしめていた。
おじさんも、ずっと働いていた仕事場と街を去る。
それなのに優大くんのことを一番に優先してくれていたんだ。
「もし」