優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。

 震える声で優大くんは絞り出すように言う。

「もし俺が期末で学年一位をとっても、それは無駄ってことだな」
 ポタポタとテーブルの上に、小さな海ができていく。
 その海にさえ、工場の煙突は浮かんでいる。

「無駄じゃねえ。期末は評点が変わる。お前の高校受験には無駄じゃねえ」
「でも俺はこの町から消えるんだな。俺がいない二学期、俺がいない放課後、俺がいない明かりがつかない家。俺はこの世界から消えるんだ」

「優大、それは違う。新しい場所でもお前は上手くいくよ」
「そうだ。お前なら違う学校でもモテモテだぞ」

担任と副担任の先生が言うので、立ち上がった。

「笑わないで」

大人には理解できない。理解できていない。
説明されて頭では分かってるのに、感情がついてきていない。


「高校でお前らはバラバラになるだろう。お前だけ少し早かっただけだ」

これでもわからないのか、と先生が言う。

「そんなの、分かってるんだよ。だけど、俺はその未来を変えてえって言ってんだ。分かれよ、大人のくせに、子どもの気持ちもわかんねえのかよ」

 震える優大くんの肩を、おじさんが優しく手を乗せた。
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