優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
「ううん。数学は難しかった。歴史は丸暗記だし、きっと大丈夫だよ」
優大くんは集中したらできる人なんだ。
その数日で返ってきたテストは、ほぼ全部平均点を超えていたんだから。
ホームルームの時だった。いつも俯いていた私だったけど、ふとその日は顔を上げていた。
そして彼を見ると、とても嬉しそうに手を振ってくれている。
ああ、ずっと見ていてくれている。嬉しくて私は教科書に隠れて手を振ったんだ。
『初めて教室で、顔を上げて俺を探してくれた日記記念』
また小説に関係ないタイトルにして、彼の小説が炎上したのは言うまでもなかった。
人の笑い声が怖い。視線が怖い。でも私は武器を持たないので、目を閉じて石になる。雲になる。漂う金魚になる。動かない絵になる。許されたいと希うウソツキな愚者になる。
貴方が来ないで欲しいと願う夜を止めるから、朝になる。
そんな気持ちで下手くそな絵を完成させた。
その時には両目から大粒の涙が零れていて、私は初めて恋を知る。
そして離れたくないと素直に叫べる彼の声がようやく聞こえたように感じた。
だからといって知った今、私と彼に時間がないのは明白で。
叫ぶのが遅かったのだと知った。
私は顔を上げなかった。始まる前に終わるそれを知る。