優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。




プールの声は、学校中に響いていたようで二階と三階からもプールを覗き込む人がちらほら見えた。

プールは白いフェンスが囲んでいるので、用事がなければ中は分からない。
そのフェンスの中で沢山の声、自転車や鞄が適当に置かれて散らばっていた。


「優大、もう許してやれよ!」
「悪かったって」
――彼の名前だ。

覗こうかと思っていたけど、体育館の壁に隠れる。
百合ちゃんもプールの中が全員三年だと分かると躊躇して足を止めた。

「うるせえ。順番にてめえら飛び込めよ。じゃねえなら俺が付き落としてやるよ」
「先生呼ぶよ! 優大!」
「うっせーって言ってんだろ! さっさと呼べよ

 さっきまでの歓声や黄色い声は、ゆっくりとすすり泣く声に変っていく。
 紗矢と陣之内くんの声と、すすり泣く声だけが響いていた。

「先輩、私、先生に言ってきます」
「う、うん」
「先輩は同じクラスの人とかいたら、止めに入ってみたらどうでしょうか」
「ええ!?」

今にも逃げ出したい私に、百合ちゃんは無理難題を言って去っていく。
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