優大くんの言動はマシュマロみたいに甘くて軽い。
中を想像するだけで怖い。きっと喧嘩してる。誰も彼を止められないみたいだし。
固まっていた私は、プールの出入り口から飛び出してきた紗矢と目が合うまで、その場を動けなかった。
今にも殴りかかってきそうな、泣き出しそうなぐちゃぐちゃな顔の紗矢が私を見て眼を見開く。
「蕾!」
「え、なに、紗矢ちゃ」
「ちょっと来て」
走って私の腕を掴むと、プールの方へ走っていく。
その力は強くて、全く振りほどけそうになかった。
プールにつくと、制服のまま中に入っている同じクラスの男子が数人いた。
さっき私のことをクスクス笑って、陣之内くんをからかっていた人たちだ。
プールの隅には、泣いている女の子たち。
止めようとしない男子たちも数人、気まずそうに見ているだけだった。
陣之内くんは、プールから出ようとする男子を足で蹴飛ばして出さないように沈めさせている。
初めて遭遇する、暴力的な場面に足がすくんだ。
「な、なに、こ、れ」
「優大、止めなよ。止めないなら、――蕾をプールに落とすよ!」