【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
呆然とふたりを眺めていると、乙葉さんがテーブルの上に置いていたわたしの手を掴んだ。
「愛川先生。もうご存知とは思いますが、蘭子は……純粋無垢な子なんです」
乙葉さんが、ちらりとわたしを見た。
何、一瞬空いた間は? それに純粋無垢って?
どういうことと目で訴えたが、見事にスルーされた。
そんなわたしは置いてきぼりで、ふたりの話は続いていく。
「純粋無垢か。まあ、知ってると言えば知ってる」
「大丈夫でしょうか?」
「心配ない。俺を誰だと思ってる?」
『優秀な口腔外科医』……今日病院で言われた言葉を思いだす。でも乙葉さんは違ったようで、ニヤッと含み笑いをした真澄さんを見て肩を竦める。
「程々にお願いします」
とひと言、わたしの手をポンポンと撫でた。
横に座っている真澄さんを見れば、なぜか涼しい顔をしている。ふたりの会話の流れは、わたしにはさっぱり理解できない。
完全に蚊帳の外で面白くない私は頬を膨らませると、真澄さんをジロッと睨んだ。
「わたしだけ仲間はずれですか?」
運ばれてきたコーヒーを、優雅に飲む姿はカッコいい。でも私のことにはお構いなしの態度は、少々鼻につく。
でもふたりはその後、終始和やかで。コーヒーを飲み干すと、乙葉さんが席を立った。