【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
彼女と過ごす約束をしているのに、三十にもなった大人がクリスマスを祝うからと、両親の待つ実家に行くとは思えない。何かわけがあって、どうしても今日行かないといけない事由があったんだろうと頭ではわかっているのに、心はざわついて落ち着かない。
ついには──。
真澄さんはそんな人じゃないとわかっているのに、こんな日に会いに行くのは、もしかして女性? そうまで思ってしまうから、自分でも笑ってしまう。かなりダメージを受けているみたいだ。
「蘭子、大丈夫?」
乙葉さんが心配そうな顔をしている。『大丈夫』そうひとこと言って彼女を安心させたいのに、そんな簡単なひとことが言えないなんて……。
鼻の奥がツンとしてきて、ヤバい泣きそう──と思ったときには、目尻から涙がぽろりとこぼれ落ちた。
一緒に料理をするって約束したのに。うんと甘やかしてやる──なんて甘く囁いたくせに。
真澄さんに対する嘆き節ばかりが胸を焦がす。
「心配?」
今さら隠しても仕方がない。乙葉さんにそう聞かれて、うんと素直に頷いた。
「まだ彼女になりたての蘭子にはキツイよね。しかも今日はクリスマスイブ。先生、タイミング悪すぎ」
呆れたように肩を落としため息をつく乙葉さんを見て、私も一緒にため息をついた。