【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「でもね、蘭子」
『心配?』と聞かれたときとは明らかに違う乙葉さんの柔らかい声音に、ボーッと一点を見つめていた目を上げる。
「病院での彼しか知らなかったときなら、わたしも心配したと思うけど。この前ショッピングモールで会ったときの彼なら、きっと大丈夫」
「大丈夫……。でも彼、モテモテだし」
食堂の窓ガラスに映る、自分の顔を見つめた。
わたしなんかより綺麗で可愛い女性は、世の中にごまんといる。真澄さんが目移りしたってなんら不思議じゃない。真澄さんはこんなわたしを可愛いと言ってくれるけれど、それだって一瞬の気の迷いだったと言われれば素直に納得できるというもの。
今度は盛大にため息をつくと、乙葉さんのクスクス笑う声が耳に届いた。
「落ち込んでるわたしを見て笑うなんて、乙葉さんひどくないですか?」
目線を乙葉さんに移し怒った顔をすると、少し膨らませていた頬をプニッとつままれる。
「ごめんごめん。でもそんな怒ると、可愛い顔が台無しよ」
「もう! わたしなんか全然可愛くないですし。真澄さんだって、本当のところはどう思っていたのか……」
つい愚痴が漏れてしまう。と同時に、乙葉さんがつまんでいた頬を、グイッと引っ張りながら離した。