【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「蘭子。今の言葉、撤回したほうがいいよ。あんたは気づいてないかもしれないけど、モールに迎えに来てからの先生、蘭子のことしか目に入ってなかったから」
「え?」
「わたしはあの時の先生を見て、蘭子を任せても大丈夫って思ったの。あの人は蘭子のことを裏切らない。今日だってよっぽどの事情だと思う」

その確信はどこから来るのか──恋がはじめてのわたしにはわからないが、乙葉さんの目は本気そのもの。

「よっぽどの事情……そう、ですよね」

わかったような、わからないような。半信半疑な気持ちで、曖昧に答える。

「恋に目覚めたばかりの蘭子にはわからないか。だったらこの乙葉さんのことを信じて、先生の帰りを待ってなさい! なんて、わたしに言われても説得力ないかぁ~」
「そうですよ、説得力ないない」
「なにー! 言ったな、こいつー!!」

立ち上がった乙葉さんが拳を振り上げる。

「乙葉さん、やめてください! 暴力はんたーい!」

わたしと乙葉さんのやり取りを見て、近くにいる人達が笑っている。そんな時間がわたしの胸のくすぶりを、少しだけ軽くしてくれた。




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