【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「悪い。別に怒ってるんじゃないんだ。ここで俺の帰りを待っててくれたんだよな?」
青の言葉に安心して、うんうんと小さく頷く。
「結局、寝ちゃったけど」
「遅くなった俺が悪いんだから、そんなこと気にするな」
そう言いながら顔を近づけると、軽く唇が重なる。
「真澄さん、お酒飲んできたんですか?」
彼の呼吸から、ほんの少し赤い果実の香りがした。
「ああ。一杯付き合えと親父に飲まされた」
そしてこれもほんの少しだが、真澄さんのスーツから女性ものの香水の匂いがするのに気づいてしまった。
誰のものなのか──。
真澄さんから家族のことは聞いたことがないが、実家に行ったのなら母親か、女兄妹か。それとも──。
また良からぬ想像が頭の中に浮かび、唇を噛みしめる。
「蘭子? どうした?」
顎に当てられた人差し指で顔を上げられると、慌てて笑顔の仮面を貼りつけた。
想像だけで真澄さんを疑うのはよくない。そうわかっているのに、自然に笑うことができない。
真澄さんのこと、信じたいのに……。
情けない自分が、また顔を出す。
「ど、どうもしませんよ。真澄さん、お風呂は?」
「そうだな、シャワーをさっと浴びてくる。少し待っていられるか?」
「は、はい。それは大丈夫ですけど」
何があるというのだろう。