【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
それから五日後の土曜日。
私は今、口腔外科の診察室で、真澄さんが来るのをひとり待っている。
今日は親知らず抜歯の日。
先週診察してもらってからというもの毎日マンションで、『口開け』と確認してもらって準備は万端。痛みもまったくないし腫れも引いている。
今朝マンションで最後の確認をしてもらい『絶好の抜歯日和だ』とわけのわからないお墨付きをもらったが、さすがに真澄さんの言葉でも抜歯の恐怖心は拭えない。
「真澄さん、面白がってわざと痛くしないかなぁ。心配」
不安から勝手な言葉を口にすると、頭にゴツンと衝撃が走った。
「高梨さん、お待たせしました。今から準備に入りますね」
叩いたのは真澄さんだと確信して、彼を睨みつける。すかさず文句を言おうとして、それをグッと抑えた。
口腔外科の診察室はそれぞれ個室になってはいるが、中待合とはカーテンで仕切られているだけ。大きな声で話せば、会話が聞こえてしまう。口腔外科の歯科助手や看護師の中にも彼のファンは多い。先生との関係がバレるのはよろしくない。
真澄さん以外に人がいないことを確認すると、おもむろに彼の手を引き顔を近づけた。
「いきなり叩くなんて、痛いじゃないですか!」
小さな声で不満をぶつける。でも真澄さんは、顔色ひとつ変えない。