【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「真澄さんが親友と思っているのなら、その親友の田所先生も迷惑だなんて思ってないと思いますよ。だから顔を上げてください、真澄さん」

完璧な人間なんてどこにもいない。三十になったって、少しくらいダメなところや情けない部分があったほうが人間らしいというものだ。

わたしの言いたいことが伝わったのか、真澄さんがゆっくり顔を上げた。すかさず彼の目をまっすぐ見つめ、笑顔を向けた。

「何を聞いても、わたしは大丈夫です。こう見えてもわたし、結構打たれ強いんです」

どこがよ?──と自分で自分にツッコミを入れる。

打たれ強い人間が、尻尾を巻いて逃げ出すようなことはしない。でも今はこうでも言わないと、自分自身に負けそうな気がした。だからこの言葉は真澄さんに向けたものではなく、自分を奮い立たせるために言った言葉。

「だから何ひとつ隠さず、全部話してください」

さあ、どこからでもかかってきなさい! もう絶対に泣いたりしないんだから!

真澄さんから見えないところで、強く拳を握る。彼の目が揺らぐのを感じて、合わさっていた目線を少しだけずらした。


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