【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし

「真澄さんは、地位や名誉を欲しがる人ではないと思います。もしそれが欲しいのであれば、自分から掴み取りにいく。簡単に与えられて喜ぶ人だと、今日子さんは思っているんですか?」

きっと痛いところを突いたのだろう。今日子さんはわたしから目線をそらし、大きく息を吐いた。
と同じ時、応接室のドアが開いた。

「今日子、これだけは言っておく。俺はいずれ外科に戻るつもりだが、地位や名誉が欲しいわけじゃない」
「勝手に話を聞いていたなんて、あまりいい行為ではないわね」
「出ていけとは言われたが、聞くなとは言われていない」

さすがは真澄さん。口では彼の右に出るものはいないだろう。それは今日子さんも同じだったらしく、ふっと笑ってみせると諦めたように肩を落とした。

「あ~あ。彼女なら簡単に落とせると思ってたのに、結構強情な人だったみたいね。負けたわ。そうと決まれば、もうここにいる必要はないから帰ります」

ソファーに置いてあるバッグを手に取り、わたしと真澄さんの間を通り抜けた今日子さんがドアの前に立つ。長い黒髪をなびかせて振り返ると、今まで見せなかった柔らかい笑みでわたしを見つめた。

「彼と一緒にいると苦労するわよ」
「おい。それ、どういう意味だよっ?」

真澄さんのツッコミには一切反応せず、今日子さんはわたしに目を向けたままだ。


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