【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
それってわたしから、愛川先生にキスをしろっていうこと? それはマズい。そんなハードルの高いこと、わたしからできるわけがない!
「無理! そんなの無理です!」
顔の前で手を振り、できないとアピールした。
「名前を呼ぶだけだぞ。蘭子は意識し過ぎだ」
意識し過ぎだと言われても、わたしは愛川先生みたいに慣れていない。愛川先生が目の前にいること自体意識してしまうのに、名前を呼べだなんて……。
「ま、俺は間違えてくれたほうがいいけどな」
「ひ、ひどい……」
頬を膨らまし反抗しようとした、その時──カウンターに置いてあった愛川先生のスマホが鳴り響いた。愛川先生は「悪い」と言って立ち上がり、スマホを手にした。
「もしもし。ああ、田所。うん、そうか……わかった、すぐ行く」
電話を切りスマホをズボンのポケットにしまうと、わたしの方へと目線を向けた。
「急用ができた。ちょっと病院に行ってくる」
「は、はい。でも田所先生って、外科ですよね? どうして愛川先生を呼ぶんですか?」
そういった途端、愛川先生がニヤッと笑った。何故と思う間もなく先生はわたしに近づくと、少しかがんで顔を寄せた。