【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「何度言ったらわかる。俺は愛川先生じゃなく真澄だ」
「あ……」
「はい、罰。時間がない、早くしろ」

面白がっているようにも見えるが、至って目は真面目。キスをしなきゃ、この場は収まらない雰囲気だ。

どういう事情かはわからないが、病院では田所先生が愛川先生を待っている。早く行かせるためにも、ここは手っ取り早くキスしたほうが良さそう……みたい。

キスなんて、外国では挨拶みたいなもの。「はあ~い」な勢いでしてしまえば、あっという間に終わってしまう。

目をギュッと瞑り唇を少しだけ尖らせると、かおを愛川先生へと近づける。と、耳にフッと愛川先生の笑ったような声が聞こえ、後頭部をガシッと抱え込まれた。

「んんっ!」

軽く合わせるだけのキス──そんなキスを想定していた。それなのに愛川先生は頭の後ろを抱え込み、もう片方の手でわたしを体ごと引き寄せる。唇どころか全身までもが密着して、これじゃあまるで抱き合っているのと何だ変わりない。

重なっている唇は、何度も角度を変えられて深さを増していく。息を吸う暇を与えられず、頭の中が朦朧としてきた。



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