【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
*  *  *
待つこと四時間──時計は午後の六時を回っている。

ダイニングとキッチンの片付けは終わり、出かける準備も整った。もう特にすることはない。手持ち無沙汰で真澄さんの帰りを待っていると、玄関のチャイムが鳴った。

「は~い」

人というのはどうしてチャイムが鳴ると、自分の家でもないのに返事をしてしまうのか。

「奥さんでもないのにね」

ぺろっと舌を出し苦笑すると、玄関へと向かった。

待っていた時間が長く退屈だったからか、相手が真澄さんとわかっていても、否応なしに気分が上がる。

「待たせて悪かった」

開口一番、真澄さんはそう言うと、上がり框で待っていたわたしの体を抱きしめた。彼からほんの少し、病院の消毒の匂いがする。優しく包み込むように抱かれ、その温かさに身を任せた。

……なんて。彼女でもないのに、甘い気分に浸っている場合じゃない。

「真澄さん。わたし、どうして抱かれてるんですか?」
「ん? どうしてって、そんなこと言わないとわからない?」

頭上から聞こえてきた声と同時に、わたしを抱きしめている腕の力が強まる。身動きがしにくくなって、顔だけうんうんと頷いてみせた。



< 59 / 258 >

この作品をシェア

pagetop