【甘すぎ危険】エリート外科医と極上ふたり暮らし
「疲れて帰ってきた俺が、蘭子を欲してるから」
真澄さんはそう言うと、わたしにもたれるように体重をかけた。
「お、おもいです、真澄さん……」
どちらかと言えば細身の男性だが、身長が百九十センチ近くある真澄さんを支えるのは容易ではない。しばらく頑張ってみたが耐えきれなくなって、体勢が徐々に崩れだすと、抱かれたまま床に倒れ込んだ。
「真澄さん、いい加減にしてください」
一体何を考えているのか、真澄さんはずっと黙ったまま。なおも体を寄せるように抱きしめられて、全く身動きが取れなくなってしまった。
でもその時、彼の体の異変に気づく。
真澄さん、体が小刻みに震えてる?
「真澄さん?」
どうしたのかと思い声をかけたが返事はない。ただ黙ってわたしの体を抱きしめ時折髪を撫でると、溜息にも似た息を吐く。
もしかしたら病院で何かあったのかも。
それが何か、わたしにはわからない。でももしそうであるならば、今わたしにできること、それは……。
真澄さんの気持ちが落ち着くまで、このままでいること──
わたしには、そんなことくらいしかできない。
彼を抱きしめるように腕を回し、その大きな背中をそっと撫でた。子供の頃、母にされたように、ゆっくりと何度も……。