終わりは始まりか ~私達の場合~
救急車で運ばれた病院の病室に伊吹が駆け込んで来た。

「伊吹…、緊急手術は終わった。」

私は膝に抱っこした陽輝を抱き上げながら、椅子から立ち上がる。

「頭の血管に何かが起こったみたい。一命はとりとめたけど、意識は戻ってない。」

この病室はナースステーションそばにある。

ひっきりなしに様子を見に来る看護師さん達。

それだけ予断が許さない状況という事らしい。

伊吹は私のそばに来て、陽輝を受け取った。

「そうか。少し陽輝と散歩してくる。美月は親父さんについていてやれ。」

伊吹の何気ない優しさが身に染みる。

お父さんにお母さんを失くした事が大きく負担になっていたことは確実だ。

もっと私がいろいろとお父さんの事を気にかけていたら…。

自分の事でいっぱいだった私は今更ながら後悔をする。

麻生くんの事もそうだ…。

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