終わりは始まりか ~私達の場合~
今更ながら、自分が不甲斐ない。

「お父さん、ごめんね。」

私はお父さんの手をゆっくりと撫でる。

仕事に陽輝の世話に、いろいろと手伝ってくれたお父さん。

それはきっとお母さんを失くした悲しみを癒す暇もないほどだっただろう。

お願い、お父さん…。

でも私の願いは届かなかった。

その夜、お父さんはひっそりと、意識を戻さずに逝ってしまった。

横には、やっぱり陽輝を抱いた伊吹がいた。

お母さんの時もそうだったが、私はこういう時に涙が出て取り乱すという性分でないようだ。

そんな自分に嫌気がさす。

「大丈夫か、美月。」

「うん…。」

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