勇気の魔法は恋の始まり。
どのくらい時間が経っただろうか。

 ふと顔を上げると雨はだいぶ弱まっている。

 そろそろ戻らないと代表である北斗が教室を施錠できなくなってしまう。

 改めて自分の描いたスケッチを見下ろすと、心なしかバランスの悪い紫陽花が水帆を見つめ返して来る。

 納得のいく作品ではないが、とりあえずこの辺で切り上げようと腰を上げる。
 

 と、パタパタと走って来る足音が聞こえ、水帆は思わず身を隠す。

 上がった息遣いから察するにどうやら男性のようだ。

 ピロティに雨宿りにでも来たのだろうか。

 水帆は窺うように建物の陰から顔を出す。
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