勇気の魔法は恋の始まり。
すると、水帆の予想通りピロティの片隅に学生らしい青年が立っていた。

 シャツもジャケットもずぶ濡れである。

 この梅雨の時期に折り畳み傘も持っていないのだろうか。

 さっきも通りすがりに見かけた学生に同じことを思った事を思い出し、思わず笑いがこぼれる。



「風の精霊よ、我にしばしの温もりと装束の施しを。」

 彼のものと思われる語りかけるような声に再びそろりと窺う。

するとその先、水帆の前に信じ難い光景が広がっていた。
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