片翼の蝶
〈おい、聞いてるのか〉
珀の声がして、慌ててかぶりを振る。
集中しなくちゃ。
物語はクライマックスを迎えているんだから。
〈恋をしたのか?〉
―なに?それ
〈高田のこと、気になるのか?〉
―そんなことない!
珀を見上げると、
珀はにやりと笑って私を見た。
私が高田くんを?ないない。あり得ない。
〈さっきからずっと見てるぞ〉
―噂されて迷惑だろうなって、思ってただけ
〈そうか〉
珀は満足げに頷くと、
物語の言葉を落とした。
私はその言葉たちを丁寧に拾っていく。
書きながら思った。
私も恋がしたい。
誰かを惜しげもなく愛してみたい。
そうなれたら私の物語にも、
何か変化があるんだろうな。