片翼の蝶



「珀、どうしてそんなこと……」


〈嫌いだろう。お前はそう思っているだろう〉


「そんなことない!
 貴子は良い子で、だから私は―!」


〈いいから黙って書け〉


どうして珀はそんなことを書かせるのか、
分からなかった。


歩み寄りたいと思っている相手のことを
嫌いだと書いてしまっては、


この先の関係が確実に崩れてしまう。


珀は私にどうしろと言うのか。


あと数ヶ月だけだといっても
まだ卒業まで時間がある。


その時間を一人で過ごせとでも言うのか。


貴子を怒らせてしまっては絶対にダメだ。


クラス中を敵に回すも同然だ。


それなのに……。





私はため息を吐き出してペンを動かした。


胸が痛む。


嫌いだなんて書いてしまう自分が
どうしようもなく醜い。


〈でも勘違いしないで。
 私が嫌いなのは、
 貴子であって貴子じゃないの〉


何を言っているんだ、この男は。


これじゃあ支離滅裂だ。


顔を上げると、珀と目が合う。


珀は私に黙って書けと目で促した。


仕方なく紙に視線を落として、
私はサラサラとペンを動かした。







私は、複数人で集まるあなたが嫌い。


いつも取り巻きを連れていて、
束になって行動するところが嫌い。


貴子は一人でいればとても素敵な女の子なのに、
束になると文句を言ってばかり。


それじゃあ勿体ないって思うの。


私は、貴子と一対一で向き合いたい。


みんなじゃなくて、まずは
あなたと仲良くなりたい。


あなたのことがもっと知りたいの。


だから私と話す時は、
どうか貴子一人で来て。


一人の人として、対等に話がしたいの。


〈それから〉
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