片翼の蝶



それから、私は私の時間が欲しい。


貴子と一緒にいたい時もあるけれど、
私には私の時間があって、


それを失くしてしまうと
私はダメになってしまう。


だから私は、いつも
貴子のそばにはいられない。


でも決してあなたを嫌いなわけじゃないの。


それだけは分かって。


「珀……」


〈言いたいことなんてこんなもんだろ。
 あとは自分で締めろ。自分の言葉で書くんだ〉


私の思っていることをほぼ全て書き出した。


それも角が立たない言い方で。


本当に珀はすごい人だ。


私っぽく文章を組み立てることができるなんて。



私はペンを突き立てて考えた。


まずは謝ろう。


あなたの期待に応えられなくてごめんなさい。


傷つけてごめん。


私も、あなたと仲良くなりたい。


不思議とペンはスラスラ進んで、
気付いた時には手紙を書き終えていた。


出来上がった手紙を掲げて見つめる。


私の、気持ちが込められている手紙を、
貴子は読んでくれるかな。


「出来た……」


〈机の中にでも入れておけ。
 明日にでも見るだろう〉


「ううん。それじゃダメ」


私が首を振ると、珀は眉を顰めて、
それからゆるゆると口角を上げた。


〈行くか〉


「うん」


私は立ち上がってカバンを手にした。


今すぐ貴子に手紙を届けたい。


その衝動に駆られたのはきっと、
珀の文章のおかげ。


今すぐに、私という人間を知ってほしくなった。


嫌われるかもしれない。怒るかもしれない。


でもここに書かれている私の気持ちは本物だから。


貴子とただ仲良くなりたい。


その部分が伝わればそれで十分だから。


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