片翼の蝶



私は真紀とまた電車に乗った。


さっきの痴漢を思い出して
電車に乗るのは少し怖かったけれど、


幸い痴漢に遭うことはなく
スムーズに駅まで着いた。


その間も珀を探したけれど、
やっぱり珀はいなかった。


どこに行ったんだ。


思えば珀と出会ってから今まで、
珀が私から離れたことはなかったから、少し心配になる。


キツイこと言っちゃったかな。
謝らないと。


そう思うけれど、
出て来てくれないと謝ろうにも謝れないじゃない。


〈行こう〉


真紀に促されて、私は駅の方を振り返りつつも高校を目指した。


もしかしたら珀がいないかもしれないから、
今度は帰り道を覚えていなくちゃいけない。


必死に目印になるものを探しながら
高校までの道のりを歩いた。





一昨日と同じように門を潜ると、
警備員さんに声をかけて名札を受け取る。


スリッパの音を響かせて、階段を急いだ。


この間の教室まで来ると、
真紀は目当ての机まで駆けていって、
机の中を覗いた。


〈中、早く開いて〉


「うん」


私は促されるままノートを開いた。


一番新しいページを捲る。


そこにはあの男の子の字が並んでいた。


返事、書いたんだ。








―〇月×日 △曜日 天気曇り。
 お前は誰だ?










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