政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
瞼の裏が眩しい。その感覚に私はゆっくりと目を開ける。

「朝……? そっか、私あのまま寝ちゃったんだ……」

漏れた声は驚くほど掠れていた。私はいつの間にかソファに凭れて眠っていたようだ。


カーテンの隙間から朝の光が差し込んでいる。壁掛け時計は午前七時を指していた。

部屋の片隅にある姿見に映った自分の姿が目に入る。
昨夜思いきり泣いている最中にコンタクトレンズを外したせいで視界が歪んでいる。

私は書き物机の引き出しから眼鏡を出して、かけた。

着ている衣類は皺になっていて、髪も顔も無残なことになっている。泣いたせいで瞼は腫れているし化粧はぐちゃぐちゃだ。

私は溜め息を吐いてのろのろと立ち上がる。変な態勢で眠っていたせいか身体が痛くて、足元がよろけてしまう。

とりあず入浴しようと部屋着を抱え洗面所に向かう。

家の中はシンとしていて人の気配がない。遮光カーテンが閉め切られた部屋は真っ暗で少し陰気な雰囲気さえ漂う。

……環さん、昨夜は帰ってこなかったんだ。赤名さんと一緒だったのかな……。

そう思うと胸が軋む。ふたりが並んで立っている姿が身に浮かぶ。

でもこんなみっともない姿を見られなくて済んだのだからよかったのかもしれない。彼にこんな醜態を晒したくない。

再びこみ上げる涙をシャワーで洗い流して、私は入浴を終えリビングに向かう。

今からはもう眠る気になれない。何より、あのベッドで眠る覚悟ができない。

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に飲む。涙で乾いた身体にその冷たさが心地よかった。


その時ガチャリと玄関ドアが開く音がした。ギクリと身体が強張る。急激にドクドクと鼓動が胸をうつ。

玄関ドアを開けることができる人はひとりしかいない。


どうしよう? どんな顔で環さんに会えばいいの?
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