政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
相良さんが笑って言う。


「私の妻です。あなたには赤名 華(あかな はな)と申し上げたほうがいいでしょうか? 仕事では旧姓を使用しているので」


彼の言葉にゴクリと息を呑んだ。にわかには信じられず、パチパチと瞬きを繰り返す。


妻? 妻ってどういうこと? 赤名さんは……相良さんんと結婚しているの? どうして? それなら環さんはどうなるの? ふたりは想い合っているのではないの? 


訳がわからずに呆然とする。
その拍子に握っていた書類封筒がするっと手から滑り落ちた。

「落ちましたよ」

相良さんが親切にもそれを拾おうと、軽く屈んで手を伸ばす。

落ちた封筒は上部が開いたものなので中身が簡単に見えてしまう。

「あっ、ダメです!」

思わず大声を上げて手を伸ばす。けれど彼の手が封筒を拾い上げるほうが早かった。

中身を見た彼の表情が強張っていく。

「……これはどういうことですか? あなたは僕の親友と最近結婚されたばかりでは? ……環があなたに何かひどいことでも? 環から僕のことは聞いていませんか?」

相良さんが手にした書類を私に返しながら、いささか厳しい口調で問う。その様子に私の手と唇が震えてしまう。


彼が差し出している書類。それは離婚届だった。


私の様子に相良さんは何かを察したのか、小さく息を吐いて言った。

「……少し話しませんか?」

相良さんに言われて、断ることができなかった。この人は環さんの親友だと聞いている。このまま逃げ帰っても、環さんにこのことはきっと伝わってしまう。
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