政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
諦めて、区役所の片隅にある休憩コーナーの椅子に腰をおろす。無造作に置かれた二組の丸テーブルと八脚の椅子。

窓口終了時間も近く、その場所には誰もいなかった。

彼は少し離れた場所にある自動販売機で缶コーヒーを買ってきてくれた。お金を出そうとするとやんわり断られた。

「本当はどこかカフェにでも入ればいいのかもしれませんが、そんなことをすると環が嫉妬に狂いそうなので」

相良さんは苦笑しながら、信じられないことを口にする。

そんなわけない。彼が私に嫉妬するなんてありえない。

私は首を横に振って、力なく否定した。


「そんなことはありません、絶対に」


頑なな態度をとる私に、相良さんは困ったように笑んだ。

「おや、環は報われませんね。まあ、元々は環の言葉不足が原因でしょうけど」
「え……?」

相良さんは苦笑しつつ、終始穏やかに説明してくれた。

環さんがあの日、頰を叩いた私をずっと探していたこと、偶然百貨店で再会して、祖母と私の両親に見合いを強引に申し込んだことを教えてくれた。

「元々、環と百貨店であなたが再会した時に申し込まれていた見合い相手は、私でも環でもない方だったそうです。環はそのことをあなたのおばあ様から伺ったうえで、必死で自分を売り込んだんです。運よくあなたのおばあ様から承諾をいただいた。けれどここで懸念事項があったんです」

相良さんはそこで言葉を切って苦笑した。
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