政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「自分が見合い相手だと事前に告げると、あなたは見合いの席に着かずに断るだろうと環は思った。そこで環は僕に協力を仰いできたんです。あくまでもあなたに警戒心を抱かせることなく当日見合いの席に来てもらうために。最初からあの見合いはあなたと環のためにセッティングされたものだったんですよ。僕はカモフラージュだった」


相良さんが真剣な声音で言った。


「彼が出した条件もすべてあなたに結婚を了承させるために脚色したものです。もちろんその件もあなたのおばあ様やご両親はご存知です」
「……なんのために、そんなことを?」


どうしてそんなまわりくどいことをするの?
おばあちゃんも皆が知っていたってどういうこと?


「これから先は僕が話すことではないと思います。環は無愛想ですが、自分の大事な人に嘘をついたり、不誠実なことをする人間ではありませんよ。本当に環の気持ちに心当たりはありませんか?」

そう言って、相良さんは静かに缶コーヒーを飲む。

その言葉に胸が締めつけられる。無理やり閉じ込めた切なくて苦い想いがこみ上げる。


「彼、の気持ち……?」


声が震える。好きだ、と言われた。


でもそれは信じてはいけないと思っていた。
そんなはずはないと思っていた。

「環とは長く親友でいますが、あれほど必死に頼みごとをされたのは初めてでした。本気で手に入れたい、守りたい人ができたから協力してほしいと懇願されたんです」
淡々と語る相良さん。

彼とは初対面に近い関係だというのに、随分繊細な話を繰り広げている。それは彼の独特の穏やかな話し方のせいだろうか。

それとも環さんの親友で赤名さんの夫という関係性がこんなにも私の警戒心を緩めているのだろうか。
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