政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「だ、だって帰りも遅いし、いつも忙しそうだし! 話したい時にいないし!」
グッと言葉に詰まりながらもなんとか反論する。

「彩乃、論点がずれてる」
うっとりするほどの柔らかな微笑みで彼が冷静に言う。


……逃げたくなってきた。

「なあ彩乃、弁当を届けてくれた時と今回で二回も約束破ってるよな? まさかひとりで電車なんて乗ってないよな?」


……おかしい。どうして私が追いつめられてるの?

彼は長い指で私の顎を掬い上げる。凄艶な眼差しが真っ直ぐに私に注がれる。ゴクリと喉が鳴った。


「離婚も勝手な外出も許さない。俺がどれだけ心配したと思う?」


彼が私の額、瞼、鼻にキスの雨を降らす。私に触れる唇はどこまでも繊細で胸が詰まる。


「彩乃は可愛いし、誰かに奪われたらって俺が毎日どれだけ不安だと思う?」


蜂蜜のように甘い声と視線を彼は私に向ける。

……どうして急にこんなに甘くなるの! こんなのずるい。こんな顔をされたらもう逃げられない。


「そ、そんなわけないっ……」
「あるよ。俺がどれだけ彩乃を愛してると思う?」


さらりと言われて呼吸が止まりそうになった。ドクンッと鼓動がひと際大きく跳ねた。


「今、なんて……」


吐息のかかりそうな距離で私は彼の夜色の瞳を見返す。彼は甘く笑んで私の頬にキスをした。


「彩乃と店で再会した時にはもう愛していた。あの日から俺はずっと彩乃を愛している。一日も早く俺のものにしたくて強引に条件を付けて入籍したんだ」


そんな、まさか!

衝撃的な彼の言葉に私は瞬きすら忘れてしまう。
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