政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「特に平井が気にしていた。彩乃が会社に来てくれた日にきちんと専務室まで送り届ければよかったと。うちの秘書たちは俺の恋を応援してくれているから」

ほんの少し茶化すように言う彼に、私は泣き笑いをしてしまう。
彼がクスリと笑って私の頬に柔らかなキスを落とした。

彼に優しく髪を撫でられて、私は気になっていたことを尋ねる。


「あの、環さん……リボンバレッタのことなんだけど……ずっと持ってくれていたの?」

そう言うと、彼は途端に顔を真っ赤にした。

彼のそんな表情は初めて見る。今日は思ってもみなかった彼の姿ばかり目にしている。でもそれが彼と私の間に立ちはだかっていた壁を取っ払ってくれた気がする。


「……もう一度彩乃に会えるように、俺の気持ちが伝わるようにって勝手に願いを込めて持ってたんだ……ごめん、返す」


ぶっきらぼうに話す彼がなんだか可愛くて、思わず笑ってしまった。彼に軽く睨まれて私は慌てて口を開く。


「よかったらこれからも環さんが持っていて。そのほうが私も嬉しい」


彼と私の出会いのきっかけになったものだ。彼が大事にしてくれていたその気持ちが私を幸せにしてくれた。

「……いいのか?」
まだうっすらと赤く染まった頬で彼が私に確認する。私は躊躇うことなく頷く。彼はフッと魅惑的に微笑んだ。


「……お守りとしてずっと大事にするよ」

その言葉だけで十分だった。


こうして話してみると、私が如何に彼を知らなかったかよくわかる。堅苦しく、強引で高慢な人だと私は勝手に決めつけていた。

本当の環さんはこんなにも優しく、思いやり深くて心配症。そのうえ細かいことにまで気がつく気遣いのできる人だった。

彼はこんなにも私を大事に想って、真っ直ぐ見てくれていた。これからはきちんとこの人と向き合いたい。


この人を大事にしたい。

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