政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
今日、私は休日だけど、彼は出勤すると思っていた。彼の休みは不規則だ。彼の役職を考えたら当然なのかもしれない。

けれど、起き上がってきた彼は私に今日は休むと告げた。それから私に幸せな提案をした。


「結婚指輪を探しに行こう」


彼の言葉に息を呑む。私たちはまだ結婚指輪を持っていない。

形に残るものは必要ないと思っていたし、離れる運命ならば思い出は少ないほうがいいと思っていた。結婚指輪について言われたこともあったけれど、彼が本気で購入するつもりだとは思っていなかった。


「俺の想いを彩乃にもほかの人にも、形にして伝えたいし示したい。夫婦としての出来事をひとつひとつ積み重ねていきたい」


涙が盛り上がる私の目を見ながら、彼はハッキリそう言った。そして梁川百貨店に買いに行かないかと誘われた。

「俺の職場を、仕事を彩乃に少しでも見せたいんだ……彩乃が良ければだけど」
彼は私の反応を窺うように遠慮がちに言う。

「もちろん彩乃が好きなブランドやデザインや店を選んだらいい。納得がいくまで探してほしい」
言葉を足す彼に、私は笑顔でかぶりを振る。

「ううん、いいの。私も今、環さんにそうお願いしようと思っていたの。環さんと一緒に選びたいし、何より環さんが大事に守っている場所をきちんと知りたい。もし職場の皆さんにご迷惑でなければ」

大好きな彼が毎日どんな仕事をしているのか、未熟な私には全て知ることはできない。だけど、知る努力はしたい。

時間がかかっても彼が抱えているものを知って、一緒に守りたい。

専務の妻という立場で私が彼の職場を訪れると迷惑になるかもしれない。
そう躊躇っていた私には彼の申し出は、願ってもないものだった。
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