政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「俺たちはまだ出会ったばかりだ。今から彩乃と夫婦になっていくんだ。できないことも知らないこともあって当然だろ？　彩乃にできて俺にできないことだってある。できないことを嘆くより、そこを補って、強みを見つけて生きていくことのほうが大事だと俺は思う。彩乃がひとりで荷物を背負う必要はない」


彼の言葉がゆっくりと私の胸に沁みこんでいく。


私とは違う彼の考え方。私とは違う身体。
だけどこんなにも大事で愛しい人。


「俺にとっての唯一の姫は彩乃だ」


彼の声に涙が零れた。


ああもう、どうしてこの人はこんなに真っ直ぐに気持ちを向けてくれるのだろう。
私に希望をくれるのだろう。幸せで切なくて苦しい。


この人の傍でずっと笑っていたい。この人を守りたい。


その時、私の脳裏に小さな提案が閃く。思わず目の前にいる環さんに話す。

「環さん！　今度の複合施設にこのプランはどう？」
「このプラン？」
ふいに泣き止んで意気込む私に戸惑いながら、彼が問う。


「お姫様になれるプラン！」


今日私が店舗の垣根を越えて商品を提供してもらったように、プロポーズや特別な日に、まるでお姫様になったような気分を味わえるプラン。

専任の担当者が一日ついて、予算や好みに応じてその日一日、店内に自分だけの特別な個室を用意してもらい、そこで気が済むまで試着や思案をしながら、自由に買い物を楽しむというもの。

あらかじめ本人の希望を聞いた担当者があらかた商品の選別をしてもいいし、本人がネットなどで試してみたい商品を選び申し込むというのはどうだろう。

ほかには希望するブランドにオリジナルの商品を作ってもらうということはできないだろうか。

興奮しながら話す私の説明を黙って聞いてくれていた彼も、面白そうに綺麗な目を輝かせた。

「それ、面白いな。新しい複合施設の目玉にできそうだ」
彼の反応が嬉しくて、私は笑顔になる。

「ありがとう、彩乃」
そう言って微笑んでくれた彼の笑顔はとても優しかった。
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