政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
結婚式はパーティーが無事に終了した後でゆっくり考えようとふたりで話している。彼と私の両親は私たちの好きにするようにと言ってくれた。


『色々なことが一度に変化して、彩乃も戸惑っているだろ。焦る必要はないから』


どこまでも優しい彼はそう言って、結婚式や披露宴をせっつく周囲を説得してくれた。彼の思いやりには感謝してもしきれない。


毎日毎日、彼を好きになっていく自分がいる。


低い声も寝起きの少し乱れた黒髪も、甘いものが苦手なところ、ゲームが好きなところ、字が綺麗なところも全部大好きだ。そのすべては一緒に暮らしていく時間の中で彼が私に見せてくれたありのままの姿。

そして、私との会話を大事にしてくれるところ、向き合ってくれるところ、嘘を吐かないところ、仕事に真面目に取り組むところが愛しくて尊敬している。

彼にある日、そのことを伝えたら、『俺は妻のすべてが愛しくて、尊敬している。あとは何をしていても可愛くてたまらないっていう補足がつくな』と妖艶に微笑まれた。

その時の私は顔から火が出るくらいに真っ赤になっていた。
本当にこの人は予測がつかないことばかり言う。


眞子にはパーティーの二日前に会社で結婚について話した。入籍するとは聞いていたから大方の予想はしていたけれど、と彼女は驚かずに言った。

入籍してから今日までに起こったこと、環さんとの関係をずっと心配してくれていた彼女に包み隠さずに話した。聞き終えた親友は長い睫毛を涙に濡らしながら、おめでとう、よかったね、と言ってくれた。

その言葉に気持ちが高ぶって、私まで泣いてしまい、ふたりで必死に化粧直しをした。


隆に会って話したことを伝えると、彼女は私の実家のことを隆に言ったこと、別れた直後に隆に頼まれたことを謝ってくれた。私は首を横に振った。

もとより眞子を責める気持ちは毛頭ない。むしろ私のことを考えてくれた彼女には感謝しかない。

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