政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
彼を叩いた日から半月が過ぎた。その間、私はずっと彼を捜していた。

専務、と呼ばれていたから来客だったはずだ。我が社の専務は五十代を超えている男性なので、社内の人間ではない。

自分の恥を晒すことが憚れて、人に尋ね歩くことはできなかった。
帰宅してからは毎日我が社と取引のある会社のホームページを閲覧し、専務職に就いている人の写真が掲載されていないかを確認していた。

眞子は眞子で彼を捜してくれていた。ただ私が伝えた拙い情報の中で捜すのはやはり難しいようで、眞子も行き詰っているようだった。


そんな毎日を過ごしているうちに二月がやってきた。

休日の土曜日の午前十時半。都内に住んでいる叔母から電話がかかってきた。

『彩乃ちゃん、久しぶりね! 元気にしている?』
「叔母さん? お久しぶりです」

突然の叔母からの電話に驚く。彼女はおっとりしている母とは違い、とても快活な人だ。

『彩乃ちゃん、今日って何か予定はある?』
「いえ、特には」
今から掃除機をかけて洗濯をして、買い出しに出ようかと思っていたくらいだ。

そう返事をすると、叔母は弾んだ声を出した。

『よかった! それなら家に来ない? 未歩が美味しい紅茶をたくさん送ってきたの。彩乃ちゃんに渡してほしいって言われているし、一緒にお茶会でもしない?』
「未歩ちゃんが? ありがとうございます、伺います!」
私は紅茶が、特にミルクティーが大好きだ。

『その後よかったら一緒に百貨店で買い物に付き合ってほしいの』
「わかりました、大丈夫です」
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