政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「叔母さんっ……」
走り寄ろうとする私の手を、今度こそ意図的に彼がグッと自分のほうへ引き寄せた。
「久しぶりだね、鳴海彩乃さん?」
耳元で楽しそうに囁かれた言葉にゴクリと喉が鳴る。正体がばれていることを瞬時に悟った。
この後の展開が恐ろしくてたまらない。
律儀にも彼は友人の誕生日プレゼントを本気で選んでくれようと、ほかのフロアに案内してくれた。けれど今の私はそれに感謝する余裕はなかった。
今だに繋がれたままの手を強引に引っ張って、フロアの奥まった階段の隅に移動する。
何か言われる前に謝罪をして帰るために、人目につきにくいその場所に彼を連れて行く。そこでやっと彼は手を解放してくれた。
失礼にならない程度に素早く距離をとり、頭を下げて謝罪した。
「故意ではないとはいえ、叩いてしまい、本当に申し訳ございませんでした。ずっと謝罪しようと思ってお捜ししていたのですが……」
しどろもどろで頭を下げたまま話す私の頭上に、小さく息を吐く音が聞こえた。
ああ、どうしよう。もしかしてすごく怒っている?
頭の中に会社で上司に叱責される姿と祖母に睨まれる姿が浮かぶ。背中に思わず冷たい汗が流れる。ギュッと目を硬く瞑った。
「ハハハッ」
その声に肩がビクッと揺れる。てっきり怒っていると思っていたのに、頭上から降ってきたのは盛大な笑い声だった。
驚いて顔を上げると端正な顔を崩して笑う、彼の姿が目に入った。
走り寄ろうとする私の手を、今度こそ意図的に彼がグッと自分のほうへ引き寄せた。
「久しぶりだね、鳴海彩乃さん?」
耳元で楽しそうに囁かれた言葉にゴクリと喉が鳴る。正体がばれていることを瞬時に悟った。
この後の展開が恐ろしくてたまらない。
律儀にも彼は友人の誕生日プレゼントを本気で選んでくれようと、ほかのフロアに案内してくれた。けれど今の私はそれに感謝する余裕はなかった。
今だに繋がれたままの手を強引に引っ張って、フロアの奥まった階段の隅に移動する。
何か言われる前に謝罪をして帰るために、人目につきにくいその場所に彼を連れて行く。そこでやっと彼は手を解放してくれた。
失礼にならない程度に素早く距離をとり、頭を下げて謝罪した。
「故意ではないとはいえ、叩いてしまい、本当に申し訳ございませんでした。ずっと謝罪しようと思ってお捜ししていたのですが……」
しどろもどろで頭を下げたまま話す私の頭上に、小さく息を吐く音が聞こえた。
ああ、どうしよう。もしかしてすごく怒っている?
頭の中に会社で上司に叱責される姿と祖母に睨まれる姿が浮かぶ。背中に思わず冷たい汗が流れる。ギュッと目を硬く瞑った。
「ハハハッ」
その声に肩がビクッと揺れる。てっきり怒っていると思っていたのに、頭上から降ってきたのは盛大な笑い声だった。
驚いて顔を上げると端正な顔を崩して笑う、彼の姿が目に入った。