政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
それなのにどうしてこの人の一挙一動に慌ててしまうのだろう。

どうして言いたくない言葉や子供みたいな態度ばかりを取ってしまうのだろう。

恥ずかしさがこみ上げて私は身体を捩り、彼から離れる。目を逸らすように床に散らばった荷物を見て屈む。

今日に限って大きめのショルダーバッグを持ってきてしまったことを悔やんだ。留め具を外していたので、中身が少し出てしまっている。

コートとマフラーを片手で取り上げて、もう片方の手でバッグを掴み、飛び出してしまった茶封筒に手を伸ばす。あろうことか写真が貼ってある型紙が茶封筒から少し出てしまっている。

これだけは絶対に見られたくない。

私の願いも虚しく、私の前に屈みこんだ綺麗な指が、一瞬早く茶封筒を拾い上げた。

「これは?」
ほんの少し顔を出していた型紙に興味を持ったのか、長い指でそれを引っ張り出そうとする。

「か、返してください!」
慌てて身を起こした私は、まだ屈んでいる彼に覆いかぶさるように手を伸ばす。

もう少しで手が届く、そう思ったのも束の間。バランスを崩して彼にのしかかってしまった。

「うわっ」
驚く声と共にドンッと彼が床に手をついて、尻餅をつく。茶封筒が彼の手から落ちる。


「……転ぶのが趣味?」


彼の胸板に片手を添えて受けとめてもらった私は、必死で首を横に振る。情けなさと羞恥で顔から火が出そうだ。この数分の間に二度も受けとめてもらっている。

「ほ、本当にすみません。わざとじゃないんです」 
消え入りそうな声で謝罪を告げる私の目を、彼がじっと見つめる。

「そんなに見られたくないの、あれ?」
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