政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
その時、彼が注文した飲み物が運ばれてきた。彼の前にはホットコーヒー、そして私の前には温かいミルクティーが置かれた。

店員は私の前に置かれたまま、すっかり冷めてしまったティーセットを手際よく下げ、ごゆっくりと笑顔で声をかけてくれた。私は給仕してくれた店員にぎこちない笑顔を向けた。

「ど、どういうことですか!?」
店員がテーブルから離れたのを見届けて、私は彼に尋ねる。私の飲み物まで注文してくれていた彼の気遣いに礼を述べることも忘れていた。

「俺は職場に恋人を連れてこない主義だったから。皆興味津々だった」
冷めるぞ、と彼は私にミルクティーを勧める。

どうして私がミルクティーを好きなことを知っているの?

「なぜ私は恋人ではないと否定なさらないんですか!?」
カッとなって反論する。

どうしてそのままにしておくの?

「ずっと手を繋いでいる姿も見られているのに? 階段の前で抱き合っていた、とまで噂されている。今さら否定すると、君と別行動をした君の叔母様にも迷惑がかかると思わないか?」
私の顔から血の気が引いていく。頬が強張る。

「……脅しているつもりですか?」
優雅にコーヒーを飲んでいる彼を睨みつける。

この人はずるい。私が断れない理由ばかりをあげていく。

悔しいが彼の言う通りだ。
叔母は彼の会社の顧客で、叔母の顔を知っている人は多い。その叔母とよく来店している私を姪だと認識している人も多いだろう。私の素性はばれてしまっている。彼は経済誌にも載るくらいの有名人だ。

そんな彼との噂があったら、私と見合いをしてくれる人はほぼいないだろう。
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