政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「何?」
私の視線に気づいたのか、彼が眉をしかめて尋ねる。
「あ、いえ。どちらに行かれるのかなと」
あなたに見惚れていました、とはさすがに言えず、咄嗟に嘘をつく。
「顧客専用の特別室」
端的にそれだけを言って、彼はまた黙ってしまった。
彼は基本的にあまり必要なこと以外話さない。余計な会話をしない。それは出会った時から薄々感じていた。
策略結婚だし、お互いの距離感を縮める必要はないからだろうか。
案内された場所は、まるで高級ホテルの一室のような場所だった。広々とした空間にゆったりとしたソファに大きな窓。所々に飾られた豪華な季節の生花。大きなテーブルには商品らしきものが載せられている。
私をソファに座らせて、彼はテーブルから指輪の入った小箱をいくつか私の前に持ってきた。
「婚約者なんだからきちんと指輪はつけろよ。変な虫が付いたら困る」
「……その可能性は皆無です」
何を言っているの? 私がほかの男性と遊ぶかもしれないと危惧しているの?
浮気はしないと約束したし、その約束を反故にするつもりはない。
疑われたくないのできっちり否定した私を、彼はいささかイラ立たし気に見ていた。否定しているのに、どうしてそんな胡乱な目を向けられるのかわからない。
未だに私は異性が苦手で、それは打ち上げや歓送迎会といった場でも相変わらずだった。
あの見合いの日も仕事だったように彼は本当に多忙だ。あの後、赤名さん、という女性が迎えにきて、車に乗り込む姿を私はティーサロンの窓越しに見ていた。
彼女は彼と私が初めて会った日にも彼に同行していた。彼には休みが月に一日か二日ほどしかないと聞いたことがある、と叔母がこの間教えてくれた。
私の視線に気づいたのか、彼が眉をしかめて尋ねる。
「あ、いえ。どちらに行かれるのかなと」
あなたに見惚れていました、とはさすがに言えず、咄嗟に嘘をつく。
「顧客専用の特別室」
端的にそれだけを言って、彼はまた黙ってしまった。
彼は基本的にあまり必要なこと以外話さない。余計な会話をしない。それは出会った時から薄々感じていた。
策略結婚だし、お互いの距離感を縮める必要はないからだろうか。
案内された場所は、まるで高級ホテルの一室のような場所だった。広々とした空間にゆったりとしたソファに大きな窓。所々に飾られた豪華な季節の生花。大きなテーブルには商品らしきものが載せられている。
私をソファに座らせて、彼はテーブルから指輪の入った小箱をいくつか私の前に持ってきた。
「婚約者なんだからきちんと指輪はつけろよ。変な虫が付いたら困る」
「……その可能性は皆無です」
何を言っているの? 私がほかの男性と遊ぶかもしれないと危惧しているの?
浮気はしないと約束したし、その約束を反故にするつもりはない。
疑われたくないのできっちり否定した私を、彼はいささかイラ立たし気に見ていた。否定しているのに、どうしてそんな胡乱な目を向けられるのかわからない。
未だに私は異性が苦手で、それは打ち上げや歓送迎会といった場でも相変わらずだった。
あの見合いの日も仕事だったように彼は本当に多忙だ。あの後、赤名さん、という女性が迎えにきて、車に乗り込む姿を私はティーサロンの窓越しに見ていた。
彼女は彼と私が初めて会った日にも彼に同行していた。彼には休みが月に一日か二日ほどしかないと聞いたことがある、と叔母がこの間教えてくれた。